万世特攻平和祈念館 

万世特攻平和祈念館
特攻基地と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、鹿児島県の 知覧 ではないでしょうか。 その知覧から西へたった15km程しか離れていない、南さつま市の吹上浜にも、 特攻基地がありました。
吹上浜といえば、現在では日本三大砂丘のひとつとも言われ、 毎年ゴールデンウィークには砂の祭典が催される、 東シナ海の美しい絶景が広がる景勝地。
そんな吹上浜も、昭和18年夏〜19年末にかけて陸軍の極秘飛行場として「万世飛行場」が建設され、 昭和20年7月までのわずか4ヶ月、特攻基地として使用されました。 当時の設備や関係書類が殆ど残っていない為、「幻の特攻基地」とも呼ばれています。

万世特攻平和祈念館は、万世飛行場跡の一角にあたる場所に建っています。 ここから多くの特攻隊員たちが南の空へ飛び立って行きました。
1階には吹上浜から引き揚げられた零式水上偵察機が展示され、 2階には特攻隊員たちの遺影や遺品、手紙などが展示されています。

 ▲ 平成4(1984)年に海底から引き上げられた零式水上偵察機

 ▲ 平成4(1984)年に海底から引き上げられた零式水上偵察機
万世特攻平和祈念館の展示も、知覧特攻平和会館 の展示と同じく、 昭和20年4月3日の初出撃から時系列に遺影が並べられ、遺影の下や近くのショーケースに 手紙や遺書、血書などが展示されています。
1036名が散華された知覧に比べると、ここ万世は201名と少ない分、 展示物も少ないですが、その分ゆっくりじっくり拝見する事が出来ました。 (知覧はとてもじゃないですが、全部の展示物をくまなく見れるといった量ではないですので・・・)
1階フロアは撮影可能ですが、2階フロアは撮影禁止です。

館内に入ると目の前に展示されている飛行機は、 吹上浜沖合600m、水深5mから47年ぶりに引き上げられた機体です。 海底の砂に埋もれていた状態を再現して展示されています。

<展示されている零式水上偵察機の現地説明を転記>
すぐれた航続力と搭載力をもつ本機は、太平洋戦争中の全期を通じて、海軍作戦地域の殆ど全域にわたって活躍し、 偵察のほか、哨戒、攻撃、連絡輸送から救難にまで幅広く使われました。
ここに展示している飛行機は、当時極秘であった八木アンテナ(電探)を付けた日本に唯一現在した珍しい機体で 「水偵302」の表示があることから、福岡を離水、沖縄方面の探敵から帰途中燃料切れで不時着したものである。
この飛行機は海軍のフロート付水上偵察機であって、ここ万世飛行場から出撃した特攻機ではありません。

 ▲ 平成4(1984)年に海底から引き上げられた零式水上偵察機

 ▲ 旧日本陸軍98式直協偵察機のエンジン・プロペラ


 ▲ 竹製 落下燃料補助タンク

 ▲ 子犬を抱いた少年飛行兵
特攻に関する写真の中でも有名な1枚「子犬を抱いた少年兵」が、 大きなパネルで展示されていました。
この写真は知覧特攻平和会館の展示物の中にもありましたので、 てっきり知覧で撮られた写真で、知覧から特攻出撃した少年兵だと思っていましたが、 この写真は 万世飛行場で撮られた写真であり、万世から特攻出撃した 少年兵の最後を写した物でした。
万世の展示の中に、「写真はひとり歩きし、知覧飛行場から出撃したかのようにも・・・?」という 困惑したフレーズが付けられていました。

前列左から、早川勉 伍長(18歳)、荒木幸雄 伍長(17歳)、千田孝正 伍長(18歳)。
後列左から、高橋要 伍長(18歳)、高橋峯好 伍長(17歳)。
(第72振武隊)

この写真は、昭和20年5月26日午後2時頃、万世飛行場で撮影されたものです。 朝日新聞の記者が撮影したもので、出撃予定時刻の2時間前の事でした。 この後、沖縄が天候不良のため26日の出撃は延期となり、実際に出撃したのは翌5月27日早朝でした。
出撃を2時間後に控えているというのに、全員が微笑んでいます。 子犬を抱き上げている様は、やはりあどけなさを感じます。 彼らの所属した第72振武隊は10名で構成され、「ほがらか隊」と称していました。 この写真に写るのは、その中の少年飛行兵5名の方々です。 こんな子供らしい表情をした少年が、死ぬために飛び立って行く。 本当に憤りを感じます。

真ん中で子犬を抱く少年が荒木幸雄伍長です。 群馬県桐生市宮前出身で、少年飛行兵に憧れて志願したのだそうです。
荒木伍長が特攻隊員の宿舎であった飛龍荘から父親に宛てた最後のハガキが残されており、 その消印が出撃当日昭和20年5月27日、宿舎の住所が川辺郡加世田町飛龍荘内と書かれている事から、 この万世飛行場から出撃されたという証となりました。


 ▲ 荒木伍長が父親へ宛てた最後のハガキ

 ▲ 「よろずよに」の碑

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万世特攻平和祈念館 DATA
住所鹿児島県南さつま市加世田高橋1955番地3
電話番号0993-52-3979
営業時間売店:9:00〜17:00(入館16:30まで)
休館日12/31、1/1
公式HP
備考
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last visited : 2017/06/16