南国市の掩体壕群 / 前浜掩体群 
南国市の掩体壕群 / 前浜掩体群
高知県南国市前浜地区に現存する掩体壕群で、全部で7基の掩体壕が現存しています。 前浜地区にあることから、前浜掩体群と呼ばれています。

掩体壕の点在する場所は、高知龍馬空港の南側に位置しています。 多くの空港が旧日本軍の航空基地を前身としている様に、 この高知空港も1944年に開隊された旧日本海軍高知海軍航空隊の日章第一海軍航空基地が前身となっています。
この掩体壕群は、高知海軍航空隊基地の施設として、同年の1944年に建設されたものです。

南国市には、この掩体壕群の他に、トーチカや指揮所・通信所跡など、 幾つかの戦争遺跡が残されており、70年以上前に戦争の悲劇があったことを無言で証明しています。

 ▲ 前浜公民館に設置された南国市の掩体の案内図

 ▲ 前浜公民館駐車場より写す。左:1号掩体、右:2号掩体
掩体とは、敵の攻撃から飛行機を守るための構造物で、太平洋戦争末期に日本全国の飛行場周辺に造られました。 掩体には鉄筋コンクリート製の物、木や竹、土で造られたもの、 屋根がなく擁壁のみのものなどもありました。

防衛庁(高知空港史)の資料によると、高知空港周辺には当時、中型15基、小型9基、W型17基あったと記されています。
当時はどの掩体にも中央の滑走路からそれぞれの掩体までは東西3本、 南北4本の幅40mの誘導路が張り巡らされていました。

現在残っているもの7基のうち、一番大きい『4号掩体』 が幅44m、奥行き23m、高さ8.5mで、一式陸上攻撃機用です。 その他の6基はほぼ同じ大きさで、 幅22m、奥行き12m、高さ5m、厚さ50cm程のもので、練習機白菊用です。
旧日本海軍高知海軍航空隊は、1941年1月から旧三島村の約7割にあたる約220haの面積を接収して飛行場や関連施設を建設しました。
ここは予科練(飛行予科練習生)卒業者のうち、偵察搭乗員の実技教育をする飛行術偵察専修練習生(飛練)の本科の練習航空隊でした。 その練習機が「白菊」です。
戦争末期には神風特攻隊菊水部隊白菊隊が編成され、「白菊」に爆弾を2個載せて沖縄へ出撃しました。 26機出撃し、52名が戦死したということです。

鉄筋コンクリートの掩体壕を作る方法は、まず掩体の大きさの土まんじゅうを作り、それを踏み固めます。 固められた土の上に、“むしろ”や“セメント袋”、“板”などを敷き詰めます。 その上にセメントを流し込み、塗り固めます。 セメントが固まったら、中の土を取り除いて完成です。
内部を覗ける掩体壕では、むしろやセメント袋、板の跡などがくっきり残っているのを見る事が出来ます。

 ▲ 7号掩体と、高知龍馬空港を離陸する旅客機
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1号掩体 
他の6基が東または南向きであるのに対して、この掩体は西向きとなっています。
この掩体には、アメリカのグラマン戦闘機によって激しい機銃掃射を受けた大小合わせて約60個の痕跡がついています。

 ▲ 1号掩体



 ▲ 1号掩体壕の奥に、4号掩体壕が見える



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2号掩体 
前浜公民館のすぐ西側にあります。 駐車場に車を停めると、すぐ目の前に見えます。
2号掩体のある区画は水田として利用されておらず、木や草が生い茂っていました。

 ▲ 2号掩体

▲ 前浜公民館と2号掩体

▲ 前浜公民館と2号掩体

▲ 2号掩体の奥に4号掩体が見える

 


 ▲ 前浜公民館駐車場から見下ろした2号掩体
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 ▲ 浜松公民館駐車場から見下ろした3号掩体

 ▲ 3号掩体の奥に7号掩体
3号掩体 
全面に蔦が生い茂っている姿が特徴的な3号掩体です。 県道のすぐ側にあるため、目に付きやすい掩体です。
3号掩体も、前浜公民館のすぐ側にありますので、公民館駐車場から見下ろして見えました。
3号掩体の前面の区画のみ、水田として使われていませんでしたので、近付いて見る事ができました。



 ▲ 全面に蔦が生い茂った3号掩体

 

  ▲ 3号掩体の後ろに5号掩体が見える

 

 

 
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4号掩体 
7基ある前浜掩体群の中で、唯一の大型機用の掩体壕が、この4号掩体です。
国内で現存する中でも最大級の大きさの掩体壕で、双発の大型機が入れる大きさです。 幅44m、奥行き23m、高さ8mという大きさで、 一式陸上攻撃機が入れられていたと思われます。
その為、掩体の後部の形が他の物と異なっています。

4号掩体の周囲には、農作業用の畦道がありますので、近付いて見学する事が出来ました。 掩体壕の内部には、板の跡の様な規則正しい線が付いています。 掩体壕を作る時に使われた敷板の跡と思われます。

 ▲ 双発の大型機が格納できる、4号掩体

 ▲ 4号掩体を真正面から写す

 ▲ 農道として使われている畦道が周囲に張り巡らされているので、近付いて見れる



 ▲ 内部の見学は自己責任で

 ▲ 内部を見上げると、規則的なラインが入っている

 ▲ 掩体を作る時に使われた板の跡がくっきり残る

 ▲ 大型機用の掩体壕なので、後部の形が他の6基と違っている

 ▲ 蔦が生い茂る4号掩体後部

 ▲ 遠景からでも大きさが見てとれる。ここに一式陸上攻撃機が入れられていたんだな〜

 
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5号掩体 
7基ある前浜掩体群の中で、唯一、公園整備されている掩体壕です。 保存整備されていますので、掩体壕の中に入る事も可能です。

この掩体は、戦後、住居として使われた時期があり、全面開口部を塞ぐ壁を作った柱が1本残っています。 開口部の下部には柱穴をコンクリートで作っています。

内部から掩体を見上げると、掩体を作る時に型枠として使われた板の跡がくっきりと残っています。 また内部の下の方を見てみると、板の一部が現存しています。
この掩体壕は、板を敷き詰めた上にコンクリートを流したという事ですね。

 

 ▲ 全面開口部左側に見える柱は、住居として使われた時期に開口部を塞ぐ壁の為のもの

 

 ▲ 戦後、住居として使われた名残の柱

 

 ▲ 掩体を作る時に使われた板の端が残っている

 ▲ 内部から見ても、美しきフォルム

 

 

 
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6号掩体 
県道に東側にあり、県道からは民家に遮られて見えにくい位置にある為、見つけにくいかもしれません。
前浜公民館に設置されている案内パンフレットの掩体の配置図は分かり易いので、それを見ながら行くと良いと思います。

この6号掩体は、周囲が360℃水田で囲まれていましたので、内部を見る事は出来ませんでした。

 




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7号掩体 
7基ある前浜掩体群の掩体壕の中で、異彩を放つ1基です。

遠目では特徴的なその姿が目立ちませんでしたが、前から回り込んで見てみると、 掩体壕の中を道路と農業用水路が貫通しています。

 ▲ 遠目では特徴的な様子が余り分かりませんが・・・

 ▲ 道路が貫通しています

 ▲ 背面から見るとこんな感じ

 ▲ ひび割れがあちこちに

 ▲ 補強はしっかりされています

 ▲ 作りが荒い感が否めない

 ▲ 鉄骨が見えている7号掩体後部

 ▲ 木片が飛び出している

 ▲ むしろの跡がくっきり残る
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前浜掩体群 DATA
住所高知県南国市前浜1534-1(前浜公民館)
電話番号
営業時間
公式HP
備考
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last visited : 2018/04/11